研究課題/領域番号 |
09470081
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斎藤 泉 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (70158913)
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研究分担者 |
金子 周一 金沢大学, 医学部, 助教授 (60185923)
田中 啓二 ヒューマンサイエンス財団, 研究員 (00292847)
鐘ヶ江 裕美 東京大学, 医科学研究所, 助手 (80251453)
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キーワード | Cre / アデノウイルス / 遺伝子治療 / ベクター / 特異的プロモーター |
研究概要 |
遺伝子治療において発現を厳密に制御する方法を確立し、その機能を持ったベクターを構築することは、有効かつ安全な遺伝子治療法の確立のために重要と考えられる。本研究では、組換え酵素Creを用いて強力なプロモーターからの発現を厳密なOFF状態からONの状態へスイッチする技術をさらに応用し、その発現を特異的プロモーターの支配下に制御するというベクターを構築した。「制御ウイルス」として特異的プロモーターから組換え酵素Creを発現するウイルスを、「発現制御ウイルス」として強力な汎用プロモーターからLacZ遺伝子を発現するスイッチユニットを持つウイルスを作製した。特異的プロモーターとして肝癌特異的AFPプロモーターを用いた場合、この二種類のウイルスを同時に胆癌ヌードマウスに静脈注射を用いて投与した結果、腫瘍部に特異的に約10-15%の肝癌細胞でLacZ遺伝子の発現がみられたのに対し、正常肝部および他臓器では全く発現が検出されず、極めて高い発現特異性が保持された制御法であることが示された。さらに培養細胞を用いた定量実験で、肝癌以外の細胞株での発現量は肝癌細胞株の1/200以下であることが示された。以上の結果から、ここに開発された発現制御系は極めて特異的な発現制御を可能とし、正常細胞組織に対する安全性を考慮した遺伝子治療法の基礎となりうると考えられた。さらに本法は他の特異的プロモーターを用いても特異性を維持したまま格段の発現増強が得られると考えられ、神経系等への応用や分化細胞に特異的な遺伝子の機能を研究するためにも有効な手段を提供すると考えられる。
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