研究課題/領域番号 |
09470084
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柳川 伸一 京都大学, ウイルス研究所, 助手 (70183978)
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研究分担者 |
石本 秋稔 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (50073127)
本庶 佑 京都大学, 医学部, 教授 (80090504)
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キーワード | Notch / マウス乳癌ウイルス / ウイルス発癌 / 白血病 |
研究概要 |
Notch蛋白質は分子量300kDaの受容体型膜蛋白質で、細胞間の接触を介する情報伝達により様々な細胞の運命決定に働いている。その細胞外部分にはEGFリピートそして細胞質側には転写因子RBP-Jκの結合領域やAnkyrinリピートが存在する。マウスでは4種類のNotch遺伝子が知られている。我々はマウス乳癌ウイルス(MMTV)のLTRのU3部分に規則的欠失(約300塩基対)をもつ変異株は、白血病原性ウルイスへと変化しT細胞性白血病細胞の誘導することを報告した。今回このマウス乳癌ウイルスのLTR変異株によりBALB/cマウスに誘導されたT細胞性白血病細胞では、その約30%の検体においてNotch1遺伝子の極めて限られた領域にプロウイルスの挿入が生じており、その結果主に細胞内ドメインよりなる分子量100kDaの欠損型Notch1蛋白質が高発現していることを発見した。従ってMMTVプロウイルスの挿入により生じた変異型のNotch1遺伝子が癌遺伝子として働いている事が明らかになった。またはBALB/cに自然発症した乳癌においてもRctrotransposon,IAPの5′LTR-gag部分がNotch4遺伝子の膜貫通部位をコードする領域に挿入され、細胞内ドメインよりなる欠損型Notch4蛋白質が発現している例を発見した。これらの主に細胞質側部分からなるNotch蛋白質は恒常的活性化型であると考えられ、この欠損Notch蛋白質が伝達する細胞分化抑制シグナルがこれらの白血病や乳癌の誘導に重要な役割を果たしている事が推測された。またNotch遺伝子群の細胞腫瘍化における作用点と作用機序は共通性が高い事も示唆された。
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