研究概要 |
1.G型肝炎ウイルスの遺伝子構造 G型肝炎ウイルス(GBV-C/HGV;以下HGV)の遺伝子構造を解析し、その変異率について検討した。日本の代表的なHGV株(GT230株)は全長9390塩基長からなり、ゲノムRNAの5′端と3′端にそれぞれ551塩基長と313塩基長からなる非翻訳領域(UTR)が認められた。ゲノムの中央部に1本の長いopen reading frame(ORF)があり、2842アミノ酸残基からなるポリ蛋白をコードしていた。ORFの5′側に構造蛋白領域があり、3′側に非構造蛋白領域があって、各遺伝子領域の並び方も既知のFlaviviridaeと同様であった。しかし、北アメリカやアフリカで分離させたHGV株と同様に、C遺伝子領域は不完全であり、GT230株ではC遺伝子に相当する部分はこれまでの分離株のなかで最も短くわずか14アミノ酸をコードしているに過ぎなかった。3′UTRは各遺伝子領域のなかで最も保存性が高く、RT-PCR法によるゲノム検出の標的領域として有用であると考えられた。 2.G型肝炎ウイルスの変異率 HGV持続感染者の感染初期と感染成立後8.4年経過した2点でのHGV RNAの全塩基配列を対比することによって、HGVの変異率は1塩基、1年当たりで3.9x10^<-4>個と算定された。HCVでは1.4-1.9x10^<-3>個であることが知られており(Okamoto H, et al.Virology 190:894-899,1992)、HGVはHCVの4分の1から5分の1程度の変異率に過ぎないことがわかった。また、この解析からHGVのエンベロープ遺伝子領域(E1/E2)にはHCVの超可変領域に相当する高変異領域はないことも明らかになった。
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