前年度までの研究によりG型肝炎ウイルス(GBV-C/HGV; 以下HGV)の各遺伝子領域のなかで最も保存性が高いことが明らかとなった3'非翻訳領域のプライマーを用い、RT-PCR法により高感度にゲノムRNAを検出し、HGVの感染状況および感染様式を調査した。 1)日本国内の一般健康人(16-64歳)でのHGV RNAの陽性率は、1303例を対象とした調査で1.2%(15/1303)であった。一方、インドネシア(ジャカルタ)の一般住民(15-70歳)での陽性率は、2.0%(20/995)であり、日本や欧米諸国との陽性率の差異が認められないことはB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染状況と大きく異なっていた。 2)また、我が国の妊婦2979例を対象とした調査でもHGV RNAの陽性率は1.1%(32/2979)であった。32名のG型肝炎ウイルス感染妊婦から生まれた児のHGVRNA陽性率は81%であり、一般健康人の集団でも高率にHGVの母児間感染が成立していること、そして母親の血中HGV量が母児間感染の最も重要な危険因子であることが明らかになった。 3)ウイルスRNAおよびE2抗体の測定により、成人でも感染後半数近くがキャリア化しているが、一過性感染例も少なからず認められることが分かった。 4)HGVは世界的に見て、G1型からG5型の5種類に分類されうることが明らかにされているが、我が国の一般健常人や肝疾患患者のHGVではG3型が大多数を占め、非加熱血液製剤での治療歴を有する血友病患者ではそれ以外の遺伝子型のHGVが多く認められた。
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