研究概要 |
本研究は胚中心B細胞の分化制御機構、免疫記憶の維持機構、選択されたB細胞の細胞死の機構を明らかにし、ひいてはB細胞の分化制御の分子機構を明らかにすることを研究の目的としている。本研究をする期間中に、(i)胚中心B細胞の発生・分化における、抗原レセプターや免疫機能分子(細胞接着分子、CD40/VD40L,CD19,CD21,CD38,サイトカインレセプターなど)の役割とその発現調節機構を解明し、(ii)B細胞表面の抗原レセプター複合体やサイトカインレセプターを介するシグナル伝達機構の検討をし、(iii)胚中心B細胞の分化誘導や寛容誘導の試験管内アッセイ系を確立する。(iv)胚中心B細胞の分化におけるチロシンキナーゼの役割を分子レベルで明らかにする。 研究は当初の計画に基づき順調に進んでおり、本年度は以下の3点を中心に研究を進め、興味ある成果が得られつつある。(1) 胚中心B細胞の発生・分化における CD38,IL-5レセプター(IL-5R)の役割を解明を解明するため、IL-5Rα鎖遺伝子欠損マウスを免疫し胚中心B細胞の生成とその応答性を調べた。IL-5Rα鎖遺伝子欠損マウスでも抗原刺激により胚中心は野生マウスと同じように形成され、B細胞はCD40やIL-4刺激で抗原特異的なlgG1産生をした。(2) ヒト胚中心B細胞はCD38分子に応答して分裂することが知られているが、マウス胚中心B細胞はCD38刺激に応答しないことがわかった。(3)B細胞の分化段階でプロBからプレB細胞への移行に必須のチロシンキナーゼBtkに1アミノ酸変異を持つ伴性B細胞不全(XID)マウスにおける胚中心の生成およびそのB細胞の応答性を調べた。XIDマウスの一次抗原刺激では胚中心の形成が悪いが二次抗原刺激すると野生型マウスと同様に胚中心を形成すること、胚中心B細胞はCD40とIL-4刺激によりlgG1産生をするが、IL-5刺激には応答できないこと、つまりIL-5応答性に異常があることが初めてわかった。
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