研究分担者 |
桜井 弘 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (30065916)
横井 克彦 自治医科大学, 医学部, 講師 (10200883)
野見山 紘子 自治医科大学, 医学部, 講師 (70049039)
原田 章 関西労働衛生技術センター, 所長
正岡 俊夫 自治医科大学, 医学部, 教授 (30063978)
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研究概要 |
これまで、カドミウム腎障害発症機序は、「カドミウムが腎に蓄積し、その濃度が臨界濃度である200μg/g以上になると腎機能異常が発現する」ので「腎障害は悪化し続け、快復することはない」と考えられてきた(WHO,1992)。しかし、カドミウムを長期間投与した動物では、肝機能異常が起り、ついで腎機能異常が起こるので、「(1)体内にカドミウムが取込まれると肝に蓄積する。(2)肝機能異常が起こり、(3)血漿中にカドミウムチオネチンが流出する、(4)分子量が小さいので容易に腎糸球体を通過したのち、(5)尿細管で再吸収され、(6)蛋白とカドミウムイオンとに解離する、(7)カドミウムイオンが尿細管膜を傷害し、腎機能異常が起こる。」と考え(Nomiyama and Nomiyama, 1994)この説を証明するための研究を行い、次の成果を得た。(1)腎皮質のカドミウム (Cd) 臨界濃度は曝露レベルによって異なる : 0.3,1,3 mgCd/kg 投与群の腎皮質 Cd 臨界濃度は 275,296,222μgCd/g で曝露レベルが高いと臨界濃度は低下した。(2)血漿 CdMT の臨界濃度は曝露レベルが違っても一定 : 上記のウサギの腎機能異常発症時の血漿 CdMT を高速液クロマト・原子吸光法(Jin et al, 1994)で測定し比較検討したところ,曝露レベルにかかわらず,血漿 CdMTが60-75μgCd/l 以上になると蛋白尿(2g/gCr 以上),糖尿(4g/gCr 以上),アミノ酸尿(0.1mol/gCr 以上)が発現した。以上の結果から,血漿 CdMTの臨界濃度は60-75μgCd/l と推定された。(3)カドミウムにより腎機能異常が発現しても、カドミウム曝露うぃ中止すれば肝からのメタロチオネインの流出が減少し、腎機能異常は快復した。(4)カドミウム曝露時に肝保護剤であるグリチルリチンを同時投与すると腎機能異常が起り難くなった。以上の実験結果により、我々の説が正しいことが証明された。
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