研究概要 |
動脈硬化は、血管内皮細胞に対する過酸化脂質による刺激とそれに対する血管内皮細胞、平滑筋細胞およびマクロファージによって生じる修復再生の結果生じるものと考えられている。セレンは、生体内においてGSHPx(グルタチオンペルオキシダーゼ)およびPHGPx(過酸化リン脂質グルタチオンペルオキシダーゼ)の活性中心として脂質の過酸化に対する防御的機構として働いている。こうしたセレン含有酵素が、動脈硬化に対して防御的に働いているだけでなく、我々は、これまで役割が不明であった血漿中セレン蛋白であるseleenoprotein Pも脳卒中に対し予防的に働いていることを疫学的に明らかにしてきた。 本研究は、高脂肪食によって高脂血症となるマウスを用いて、セレン欠乏による過酸化脂質生成量や脂質代謝への影響、およびセレン欠乏マウスへの安定同位体セレン投与によるセレンの体内分布の解明、セレン酵素であるGSHPx活性およびPHGPx活性の経時的変化、さらにはこれらセレン酵素と脂質代謝との関連を明らかにすることを目的としている。 昨年度までに、セレン欠乏餌の検討およびセレン欠乏マウスの作成、高脂血症モデルマウスの作成、HPLC-ICP-MSを用いた血漿中セレンの分別分析等の手法を確立してきた。今年度はモデルマウスにセレン欠乏高脂肪餌を与え、GSHPx,PHGPx活性、血清脂質値、過酸化脂質値の測定用サンプルの採取を行った。現在、測定を行いつつデータ解析中である。 また、血漿中セレン蛋白、特にGSHPxおよびseleenoprotein Pを分別測定するHPLC-ICP-MS法は、既に確立されており、今後は、上記サンプルを順次分別測定していく。
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