研究概要 |
本年度は、下記の項目の調査を行い、中間的な成績を得た。 1.健常者集団内におけるHCVキャリア数の推計 広島県赤十字血液センターにおける1992年2月〜1995年1月までの献血者の資料(20歳〜64歳)をもとに、調査期間内の個人の重複を取り除いた資料(1供血者あたり1資料)を抽出し、対象とした(158,048例)。この資料を元に、性・年齢階級別のHCV抗体陽性率を求めた。また、無作為に抽出したHCV抗体陽性者を抗体力価別に分類し各群のHCVRNA陽性率を求めた。これらの成績と、性・年齢階級別の入口(国勢調査推計人口、1994年)をもとに広島県内の健常者集団(20歳〜64歳)におけるHCVキャリア数を推計した結果、HCVキャリア数は、県下の20歳〜64歳の対象人口1,731,419人中24,262人存在すると推計された(男性対象人口856,400人中12,624人、女性対象人口875,019人中11,638人)。 2.一般健常者集団内に潜在するHCV持続感染者の病態解析 '92年8月〜'97年11月の間に献血を契機に見出されたHCVキャリア(延べ3,366例)中、受入病院への受診が確認され、診断が確定した1,050例のうち、920例を対象とした。病院初診時の臨床診断が「正常」とされたものは、男性438例中111(25.3%)女性482例中208例(43.2%)、「慢性肝炎」と診断されたのは男性320例(73.8%)、女性270例(56.1%)であった。なお、「肝細胞癌」と診断され、外科的切除を受けた男性1例(0.2%)も見いだされている。 3.高度浸淫地区におけるHCV感染状態およびHCV持続感染者の病態の解析 住民検診時のHCV抗体測定を終了した血清の収集・保存(-80℃の冷凍庫)を行っている。 次年度は、これまでに見いだしたHCVキャリア群について統一した診断基準をもとに、病態の経時的変化を追跡し、経過観察中に肝硬変・肝細胞がんがへ進展する頻度の算出も行う予定である。また、高度浸淫地区におけるHCV感染の頻度を把握するとともに、住民検診時にHCVキャリアを適切に選別するシステムおよびHCVキャリアの健康管理体制の指針を確立する予定である。
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