対象はK大学生1年生から4年生まで630名(男子279名、女子351名)を無作為抽出して、阪神大震災直後約1カ月にUPIをもとに作成した64項目からなるアンケート調査を行い、心身症状の主として自覚症状を分析したが、同様の調査を5カ月後、2年3カ月後、3年5カ月と計4回それぞれ実施して、症状の消長を追跡した。2回目では、男子108名、女子187名、計295名を、3回目では男子67名、女子208名、計275名を4回目では、男子68名、女子159名、計227名をそれぞれ対象とした。その結果、震災1カ月では肩凝り、立ちくらみ、咳嗽がある、易疲労、神経質、ねつき・寝起きが悪い、睡眠が浅い、無気力、ぼーっとする、やる気がでてこない、将来の事が心配、自信をもてない、決断力がない、根気が続かないなど多くの症状項目で、高頻度の症状出現が指摘されたが、2回目では顕著に低下したものの、3、4回では再び増加した。つまり青年期における大震災の影響は、心身症状として遷延化する可能性が示唆された。もっとも男子では、災害に対して反応は早いが、回復も早く安定化するのに対して、女子では、症状が長期的に持続する傾向が指摘された。この傾向は、全学生を対象とした学校検診データの経年的分析でも認められ、1995年と比較して94年、96年、98年では心身症状で有意差があり、とりわけ女子に症状が顕著で、視力に関しては男女ともに低下がみられた。
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