(1) 被災地大学のK大学生延1427名(女子905名)を無作為抽出して、阪神大震災直後約1ヵ月から5ヵ月後、2年3ヵ月後、3年5ヵ月と計4回、UPIをもとに作成した64項目からなるアンケート調査をそれぞれ実施した。心身症状の消長を追跡調査して、比較分析したが、その結果、震災1ヵ月では肩凝り、立ちくらみ、咳嗽がある、易疲労、神経質、ねつき・寝起きが悪い、睡眠が浅い、無気力、ぼーっとする、やる気がでてこない、将来の事が心配、自信をもてない、決断力がない、根気が続かないなど多くの症状項目で、高頻度の症状出現が指摘された。2回目では顕著に低下したものの、3、4回では再び増加した。つまり青年期における大震災の影響は、心身症状として遷延化する可能性が示唆された。とりわけ女子では、症状が長期的に持続する傾向が指摘された。この傾向は、全学生を対象とした学校検診データの経年的分析でも認められ、1995年度8195名(女子2712名)と比較して94年度、96年度、98年度では受診率で特に差は無かったが、心身症状で有意差があり、とりわけ女子に症状が顕著で、視力に関しては男女ともに低下がみられた。 (2) 被災地の大学生35名(女子16名)を選び、脳波、筋電図、瞬目、心拍、指尖端容積脈波、皮膚電気反射、サーモグラフィーなど多誘導マルチポリグラフ的測定をおこない、自然音、各種情動刺激などによる生理変化を比較解析したが、情動刺激ではアルファー帯域の周波数が減少してベータ帯域の増加傾向や有意な温度変化など多くの生理指標で過敏に反応することが明らかになった。
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