研究概要 |
1) コレセプターCCR3のHIV感染に果たす役割 HIVのコレセプターの一つであるCCR3は末梢血では好酸球に強い発現を認め、エオタキシンなどの好酸球走化性因子の受容体として機能するが、その他の血液細胞での役割は明らかにされていない.我々はCCR3に対するモノクローナル抗体を樹立し、レポーター遺伝子を利用した細胞融合系を用いて、この抗体がCCR3を介したHIVの細胞内侵入を阻害することを明らかにした.さらにこの抗体を用いて、末梢血由来の樹状突起細胞(dendritic cell;DC)がCCR3を発現していること、およびHIVのDC感染にCCR3が利用されていることを明らかにした. 2) HIV感染におけるコレセプター刺激伝達系の関与 サイトカラシンやチロシンキナーゼの阻害剤を用いた実験系から、HIVenv依存性の細胞融合には、アクチンの重合およびチロシンキナーゼが重要な働きをしていることが推察された.そこで各種のチロシンキナーゼ(Src,Fyn,FAK,Ablなど)を欠損する細胞を用いて検討したが、これらの変異細胞でもHIVenv依存性の細胞融合は誘導されることが明らかにされた.しかしながら、例えばFAK欠損細胞ではFAK関連のキナーゼCAKb(Pyk2)を発現していることを我々は見い出しており、上記の結果からこれらのキナーゼがHIV感染に全く無関係であることが直ちに示唆されるわけではない.実際に我々は、HIVのコレセプターの一つであるCXCR4をそのリガンドであるSDF1で刺激するとチロシンキナーゼの基質であるp105CasLのリン酸化が誘導されることを見い出した.p105CasLはT細胞の刺激伝達系に関与する情報伝達分子であることも我々は報告しており、HIV感染に伴うT細胞の機能異常にコレセプターを介した情報伝達系が関与している可能性も考えられた.
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