本研究は、ヒスタミンH2受容体の欠損マウスを作製することにより、ヒスタミンH2受容体に関わる機能と病態の理解をさらに深めることを目的とした。壁細胞での胃酸分泌には、ヒスタミンH2受容体、ガストリン受容体、アセチルコリン受容体の三者が関与しているが、なかでもヒスタミンH2受容体を介する酸分泌は中心的な役割をしている。臨床的にもH2受容体拮抗剤は消化性潰瘍の治療の中心的な役割を果たしている。現在プロトンポンプ阻害薬が広く使われてきているが、逆に即効性やプロトンポンプとは異なる胃酸分泌抑制の特性から、H2受容体拮抗薬は再評価を受け始めている。今後とも臨床で重要な地位を占め続けることは確実である。この点から、胃酸分泌抑制作用以外の点においても壁細胞の他、血液、中枢神経などをはじめとする多くの臓器に発現しているH2受容体の研究は重要である。H2受容体遺伝子クローニングによりH2受容体遺伝子を導入した発現細胞での解析が可能になり、受容体機能に関する新たな知見が蓄積されている。しかしながら、壁細胞の特性を完全に有した細胞系がないために、受容体の生体全体における機能に関する解析は困難であった。そのため本研究ではまず5'非翻訳領域を含むマウスH2受容体遺伝子全長をクローニングし、遺伝子相同組み換えに用いるベクターを構築し、これをES細胞に導入することにより相同組み替えを起こしたES細胞を得た。これをマウスのblastcystに導入しキメラマウスを作成した。しかしまだジャームラインへのトランスミッションが確認されておらず、現在さらに解析とキメラマウスの作成に取り組んでいる。
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