研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)全遺伝子のcDNAをT7プロモーターの下流に導入した発現ベクターをヒト肝細胞由来融合細胞(IMY細胞)にトランスフェクションし,この細胞にT7RNAポリメラーゼ発現組換えアデノウイルスあるいはワクシニアウイルスを感染させた。そして,この培養細胞系では,HCV遺伝子にコードされているすべてのHCV構造蛋白質と非構造蛋白質が発現していることを蛍光抗体間接法によって確認するとともに,プラス鎖およびマイナス鎖のHCVRNAが細胞内に存在することを同定し得た(4th International Meeting on Hepatitis C Virus and Related Viruses,1997)。この成績は,上記培養細胞系においてHCVの遺伝子が複製している可能性を強く示唆しているものであることから,この細胞を検索対象として,HCV粒子の細胞内局在についての超微形態学的検討を行なった。抗HCVコア抗体を用いた金コロイド免疫電顕法では,細胞質内の無構造基質領域にHCVコア抗原が検出され,その基質領域内部には30〜35nmの電子密度の高いコア様粒子が存在することが観察された(4th International Meetung on Hepatitis C Virus and Related Viruses,第33回日本肝臓学会総会,1997)。そして,通常透過電顕法によってHCVcDNAを導入発現したIMY細胞の小胞体内および空胞内に直径50〜60nmのウイルス様粒子とその出芽像を捕えたので,抗HCVエンベロープ抗体を用いた免疫電顕法によるHCVビリオンの同定を試みている。また、上記IMY細胞培養上清のショ糖度勾配遠心法による解析では、比重1.05,1.12〜1.16,1.25の分画にHCVRNAとHCVコア蛋白質のピークが認められた(第20回日本分子生物学会年会,1997)ことから,これら分画試料中のHCV粒子を免疫電子顕微鏡的に確認すべく研究を進めているところである。
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