研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子RNAの3'末端側98塩基を含むHCVの全長遺伝子cDNAをトランスフェクション・インフェクション法によってヒト肝実質細胞由来不死化培養細胞(IMY細胞)へ導入し,HCV関連蛋白質の発現とHCVRNAおよびその増殖中間体であるマイナス鎖HCVRNAの存在が確認された培養細胞では,透過電子顕微鏡法で細胞質無構造気質領域に30-35nmの高電子密度のウィルスコア様粒子と小胞体様構造物内腔に50-60nmのウイルス様粒子およびその出芽像が観察され,金コロイド免疫電子顕微鏡法によって,前者がHCVコア粒子であり,後者がHCV粒子であることを明らかにした。このHCV感染細胞培養上清のショ糖密度勾配遠心分画試料のHCVRNAの定量解析では,比重1.12-1.15の分画にHCVRNA量の最大のピークを認め,比重1.25の分画に第2の小さなピークがみられた。そして,比重1.12-1.15の分画には抗HCVエンベロープ抗体と反応する55-65nmのHCV粒子が存在し,比重1.25の分画には抗HCVコア抗体と反応する33-40nmHCVコア粒子が存在することを金コロイド免疫電子顕微鏡法で確認した。さらにこの電子顕微鏡像に回転焼付け法を行うことによって,HCVコア粒子が正20面体構造をとっていることを明らかにすることができた。(50th Annual Meetinng of the American Association for the Study of Liver Diseases,1999)。以上の免疫超微形態学的研究成果は,ヒト肝実質細胞由来不死化培養細胞にHCV全長遺伝子cDNAをトランスフェクション・インフェクション法で導入した系では,確実にHCVの複製が進行し,細胞質内でウイルスコア粒子が形成され,それが小胞体膜の外套を被って小胞体腔内へ出芽し,ビリオンが完成するというHCVのウイルス粒子形態過程を強く示唆するものであった。
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