私達はこれまで、EGF様構造が1ヶ所、follistatin様構造が2ヶ所からなる新規蛋白質の遺伝子を胃粘膜線維芽細胞からクローニングし、この新規蛋白質をtomoregulin(TR)と命名し、種々の検討を行った。まず、私達はTRcDNAを大腸菌で発現させ、GST-TRを用いてTRに対するモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体を作製した。これら抗体を用いることにより、TR蛋白の生化学的特性をwestern blot法で解析することが可能となった。また免疫染色においてTR蛋白発現を検討することも可能であった。TRcDNAをCHO細胞、Cos7細胞に導入し、発現TRを抗体カラムを用いて精製することができた。 これら一連の検討の結果、これまで(1)TRは胃粘膜では、粘膜固有層及び粘膜下の間葉系の線維芽細胞に高発現する。発現したTR蛋白は基底膜に集積する。一方、中枢神経系では神経細胞やグリアに高発現し、発現量は消化管よりも多い(2)TRは膜貫通蛋白質で、細胞外にfollistatinドメイン2ヶ所、EGFドメイン1ヶ所を有するが、これら細胞外ドメイン全長からなるTR及びfollistatinドメイン、EGFドメインなどのフラグメントが蛋白分解をうけて放出される(3)精製TR細胞外ドメインは胃癌細胞株MKN28やerbB4を高発現させたCHO-erbB4のerbB4チロシンリン酸化を刺激するが、EGF受容体、erbB2、erbB3のリン酸化は刺激しない、等を見出した。これらの結果からTRは消化管、中枢神経系で、EGF様因子の1つとして作用する可能性が示唆される。
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