優性遺伝性痙性対麻痺の遺伝子解析

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09470149
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 佐々木 秀直 北海道大学, 医学部, 講師 (80281806)
• 研究分担者: 森若 文雄 北海道大学, 医学部, 助教授 (30142722) ; 田代 邦雄 北海道大学, 医学部, 教授 (90002154)
• キーワード: 脊髄小脳変性症 / 痙性対麻痺 / 遺伝子異常 / 遺伝子座

研究概要

(1)神経変性疾患としての痙性対麻痺(spastic paraplegia;SPG)をきたす原因は多様である。家族性SPGでは、少なくとも11以上の遺伝子座(SPG-11)が決定されている。そのうちSPG4は遺伝子座が第2染色体短腕2p21-p22に位置し、spastin遺伝子の変異に因ることが1999年に明らかにされた(Hazan J,et al.Nat Genet 1999; 23: 296-303)。変異はエクソンもしくはイントロン領域における塩基の欠失もしくは置換によるもので、5カ所の変異が報告されている。我々は連鎖解析によりSPG4と推定される1家系について、この変異を検討したが、対応する異常を認めなかった。すなわち、従来には知られていない部位に変異があるものと推定されるので、分析を進めている。
(2)第16染色体16q24.3に位置しているSPG7は劣性遺伝性疾患で、ミトコンドリア蛋白であるparapleginの変異による疾患である(Casari G,et al.Cell 1998; 93:973-983)。自験例において検討した結果では、既知の変異は認められなかった。
(3)劣性遺伝性SPGの一群に、先天性白内障、運動失調、脳梁萎縮、軸索性ニューロパチーを伴う疾患がある。こらの臨床的特徴を有する疾患は、我が国には散発的に報告されているが欧米では稀である。この疾患について、検討を進めている。
(4)SPGは脊髄小脳変性症に属する疾患群である。北海道の疾患頻度、構成、各疾患の臨床的な特徴などを検討し、報告した。

研究成果

• [文献書誌] 佐々木秀直: "SCALの遺伝子変異と異常遺伝子産物ataxin-1の生物学的活性と神経変性機序"日本臨床. 57(4). 801-804 (1999)
• [文献書誌] 佐々木秀直 他: "CAGリピートの異常伸長に伴う脊髄小脳変性症2型(SCA2)の臨床的多様性"日本臨床. 57(4). 818-821 (1999)
• [文献書誌] 佐々木秀直 他: "日本におけるトリプレットリピート病の疫学調査と頻度統計-脊髄小脳変性症を中心に"日本臨床. 57(4). 787-791 (1999)
• [文献書誌] 佐々木秀直: "SCA1"Clinical Neuroscience. 17(4). 390-391 (1999)
• [文献書誌] 佐々木秀直: "SCA2"Clinical Neuroscience. 17(4). 392-393 (1999)
• [文献書誌] 佐々木秀直 他: "SCA4"Clinical Neuroscience. 17(4). 394 (1999)
• [文献書誌] 佐々木秀直 他: "Spinocerebellar ataxia type 4(SCA4)"日本臨床「神経症候群II」. 別冊. 280-282 (1999)
• [文献書誌] 佐々木秀直 他: "Spinocerebellar ataxia type 5(SCA5)"日本臨床「神経症候群II」. 別冊. 283-284 (1999)
• [文献書誌] 佐々木秀直 他: "Spinocerebellar ataxia type 7(SCA7)"日本臨床「神経症候群II」. 別冊. 285-287 (1999)
• [文献書誌] 佐々木秀直 他: "脊髄小脳変性症"医学のあゆみ「神経疾患 state of arts 」ver.1. 別冊. 534-537 (1999)
• [文献書誌] 矢部一郎 他: "繰り返す"めまい"で発症し、15年経過してなお、"めまい"が主症状のspinocerebellar ataxia type 6 の1例"神経内科. 51(1). 75-78 (1999)
• [文献書誌] Matsuura, T., et al: "Mosaicism of unstable CAG repeats in the brain of spinocerebellar ataxia type 2(SCA2)"J Neurol. 246(9). 835-839 (1999)
• [文献書誌] Shiojiri, T., et al: "Vocal cord abductor paralysis in spinocerebellar ataxia type 1"J Neurol Neurosurg Psychiatry. 67(5). 695 (1999)
• [文献書誌] 矢部一郎 他: "Spinocerebellar ataxia type 6(SCA6)におけるアセタゾラミドの治療効果"臨床神経. 39(8). 793-799 (1999)
• [文献書誌] Pang, J., et al: "A common diseasehaplotype in spinocerebellar ataxia 2(SCA2)pedigrees of diverse ethnic origin"Eur J Hum Genet. 7(7). 841-845 (1999)
• [文献書誌] Sasaki, H., et al: "Prevalence of triplet repeat expansion in ataxia patients in Hokkaido, the northernmost island of Japan"J NeuroI Sci. (印刷中).