研究概要 |
1)遺伝性痙性対麻痺(spastic paraplegia;SPG)をきたす原因は多様でり、現時点では13の遺伝子座(SPG1-13)が決定されている。そのうちSPG4は第2染色体短腕2p21-p22に位置するspastin遺伝子の変異に因ることが1999年に明らかにされた。我々は我が国にもSPG4のあることを連鎖解析により1997年に報告した。SPG4は優性遺伝性SPGの中では最も多い疾患であろうと予想されているが、我が国の疾患構成については知られていない。そこで、予め同意を得た後、遺伝性FSPと臨床診断された12家系の発端者について、spastin遺伝子の変異を検討した。spastin遺伝子の全exonを網羅するよう設定されたプライマーを用いて、PCR法で増幅の後、ダイレクトシークエンスにより塩基配列を決定した。その結果、5家系で各々異なった遺伝子変異が認められた(全SPG家系の42%)。その内訳はmissense変異(R499C,Q347K,K388R)とsplice site変異(1370+1g→t,1742-1g→t)であった。すなわち、(1)本邦の遺伝性FSPにはspastinの変異に起因するもの(SPG4)のあること、(2)我が国の家族性SPGにおいてはSPG4が40%前後を占めること、(3)複数のmutationのあることから家系毎にSPG4変異の由来の異なること、などが明らかになった。 2)遺伝性皮質小脳萎縮症(CCA)の40%は原因不明である。遺伝学的に既知の疾患と異なることが確認された1家系について、連鎖解析を行い遺伝子座を第19染色体長腕19q13.4上に決定し、SCA14として報告した。 3)北海道内の家族性脊髄小脳変性症228人に占める痙性対麻痺の頻度を検討した。その結果、家族性患者の5.7%が純粋型、4.8%が複合型痙性対麻痺であった。 4)複合型痙性対麻痺の臨床および遺伝学的検討を行い、(1)優性遺伝形式をとる白質脳症で小脳失調と痙性対麻痺を呈する疾患、(2)劣性遺伝形式をとる痙性対麻痺で、先天性白内障、運動失調、脳梁萎縮、軸索ニューロパチーを呈する疾患、について検討し報告した。
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