本研究の目的は致死的不整脈の危険性と治療効果の判定を可能とすることである。この目的のため従来のLP、RRゆらぎ、QTdispersionなどに加えT波高のオルタナンスを検討する。本研究は3年間患者の検査登録を行い以後追跡調査する計画である。対象患者は心筋症、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、心不全をもつ洞調律の患者である。 平成9年度実績 症例数を増可のため2関連施設の協力を受け研究グループを発足させた。LP測定装置、デジタルホルター装置、T波オルタナンス測定装置を導入し患者登録を開始した。測定項目は非侵襲的心電図検査、心エコー図に加え、通常診療の心臓カテーテル検査所見があればこれを付け加えることとした。現時点までの登録数は約50例であり今年度の目標症例数を達成し前向き研究を開始した。登録患者の内訳は心筋症、高血圧性心疾患、虚血性心疾患、心不全である。肥大型心筋症では約6割、高血圧性心肥大では2割のT波高オルタナンス陽性が認められた。これまでのところ登録患者での突然死、および致死的不整脈の発生は2件である。いずれも拡張型心筋症症例である。一例はT波オルタナンス陽性であった。患者に先立って検討した健常者10余名でLP、T波高オルタナンスを測定したが陽性者は皆無であった デジタルホルター端末を用いて、RR解析に加えT波高の解析を可能とするシステムを試作した。長時間心電図からの予知因子の抽出は致死性不整脈の直接の要因の推定に役立つと思われる。これまでの予備的解析ではT波高オルタンナンス程度はほぼ心拍数の増加につれて午前中に増加することが示された。しかし同一の心拍数でもその時間帯によるばらつきがあり日内変動の存在が示唆された。
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