本研究は陳旧性心筋梗、心筋症、心不全などの患者を対象にしてT波オルタナンスを計測しSCD、致死的不整脈の発生をend pointとした前向きstudyの導入を行うことが本研究の大きな目的であった。これまでに器質的心疾患約250症例の初回検査を終了し現在は予後観察中である。前向き研究の特性上本申請研究の終了時点での解析は追跡期間が必ずしも十分でない症例も存在するが現時点での研究成果をまとめることとする。 TWA陽性率及び陽性症例におけるSVT/NSVT合併頻度は基礎心疾患によって異なっていた。つまりμVTWA判定基準は心疾患別に考慮すべきと考えられた。 持続性心室頻拍群(SVT)、非持続性心室頻拍群(NSVT)及び心室性頻拍のない群(NVT)に分類し、Kaplan-Meier曲線による予後検定を行った。SVT群のevent-free生存率は他2群に比して有意に低下していた。駆出率は3群間で有意差がなかった。収縮及び拡張末期左室径指標はSVT/NSVT群とNVT群間に有意差を認めたが、SVT群とNSVT群に差はなかった。これに対しTWA陽性またはLP陽性率はSVT/NSVT群で高く、SVT群とNSVT群の区別にも比較的高い陽性予測精度を示した。特にTWAとLPがともに陽性の場合最も高い陽性予測精度を示した。 また研究期間中において植え込み型除細動器(ICD)の使用が一般的となりVT/VF症例のうち薬剤抵抗性のものにはICDが使われており、当初計画した薬剤による介在研究はより治療確度の高いICD治療にシフトしており、介在研究を行うことは倫理上出来なかった。本研究は前向きデザインであり現在約250症例について追跡調査中である。
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