細胞障害性ストレスに対する心筋細胞の防御およびその破綻の分子機構に関する研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09470161
• 研究機関: 群馬大学
• 研究代表者: 倉林 正彦 群馬大学, 医学部, 講師 (00215047)
• 研究分担者: 世古 義規 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (30240708)
• キーワード: Mn-SOD / 酸化ストレス / サイトカイン / プロモーター / NFkB / Sp1 / 転写因子 / BTEB2

研究概要

【目的】スーパーオキサイドを過酸化水素に変換するsuperoxide desmutase(SOD)はミトコンドリア内に生ずる活性酸素種を除去し、酸化ストレスから細胞を保護する重要な酵素である。Mn-SODはTNAFa,IL-1bなどの炎症性サイトカインやリポ多糖類、フォルボールエステルなどにより発現が増加する。この機構を明らかにする目的でMn-SOD遺伝子をクローニングし、プロモーター機能を解析した。【方法】ヒトMn-SODcDNAをプローブとしてヒト遺伝子ライブラリーをスクリーニングした。得られた陽性クローンの塩基配列を決定し、プロモーター領域を1.5kb含むDNA断片をルシフェラーゼベクターに挿入した。このMn-SOD-ルシフェラーゼ発現にベクターを各種転写因子の発現ベクターとともに培養ウシ肺動脈内皮細胞(CPAE)にコトランスフェクトし、ルセフェラーゼアッセイを行った。また、Mn-SOD-ルシフェラーゼの5'-欠失ミュータントを作成した。【結果】転写開始点から1.4kbを含むMn-SODプロモーター活性は、CPAE中で非常に強い活性を示した。転写開始点から-120〜-70を欠失することによりルシフェラーゼ活性は著明に活性が低下した。この領域中にはGCボックスが2個存在した。Mn-SODプロモーターはSp1,BTEB2とのコトランスフェクションにより著明に活性が増加した。フォルボールエステルPMA(100ng/ml)の添加によりMn-SODプロモーター活性は明らかに増加した。-70までの欠失にてPMAの効果はほとんど消失した。NFkBp65はMn-SODプロモーター活性を変化させなかった。【総括】Mn-SODプロモーターの構成的な活性はSp1とGCボックスによること、PMAによる誘導にSp1が関与していることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Manabe I.et.al.: "Isolation of the embryonic form of smooth musde myos'n heavy chain(SMemb/NMHC-B)gene and characterization of its 5'flanking region" Biochem.Biophys Res.Commun. 239. 598-605 (1997)
• [文献書誌] Kuro-o M.et.al.: "Mutation of the mouse klotho gene leads to a syndrome resembling ageing" Nature. 390. 45-51 (1997)
• [文献書誌] Kurabayashi M.et al: "Downregulation of angiotensin II receptor type I in heart failure" Circulation. 95. 1104-1107 (1997)
• [文献書誌] Suzuki T.et.al: "A novel biochemical method for aortic dissection" Cirulation. 93. 1244-1249 (1996)
• [文献書誌] Suzuki T.et.al.: "Preferential differentiation of P19 mouse embryonal carcinsma cells into smooth muscle cells" Circ.Res.78. 395-404 (1996)
• [文献書誌] Watanabe M.et.al.: "Structure and characterization of the 5'flanking region of the mouse smooth muscle myosin heavy cha'n SM1/2 gene." Circ.Res.78. 978-989 (1996)
• [文献書誌] 倉林正彦: "心臓にやさしい心不全治療" 診断と治療社, 11 (1997)
• [文献書誌] 倉林正彦: "慢性心不全の新しい視点" ライフサイエンスメディカ, 7 (1997)