研究概要 |
(1) 低酸素刺激/(低酸素刺激後)再酸素化刺激に対する心筋細胞応答の分子機構の解析: 低酸素および再酸素化の両刺激によって、Src familyのtyrosine kinase ,p21^<rin>、3つの異なるMAPK family memberとそれらの上流および下流のkinase、FAKなどの接着斑関連のtyrosine kinase、さらにJak/STAT系tyrosine kinase、ATF-2などの転写因子等の活性化を介して遺伝子発現に至ること、また両刺激の間で細胞内情報伝達経路が少なくとも一部は異なることを明らかにした。(2) 低酸素刺激/再酸素化刺激による細胞内情報伝達系の活性化を媒介していると考えられる液性因子のオートクライン機構の解明:(A)低酸素刺激による一連のシグナル・カスケードはVEGFのオートクライン的な作用を介して活性化されることを明らかにした。また、低酸素刺激に対する心筋細胞応答において、VEGFのオートクライン機構はapoptosisを抑制したり細胞外基質との接着を増強したりすることによって、細胞保護的に作用していると考えられた。(B)再酸素化刺激についても、同様に何らかの生理活性物質を介するオートクライン機構が存在することを見い出し、現在それを単離・精製し解析中である。(3) 相対的な低酸素刺激に対する心筋細胞応答の分子機構の解析:培養心筋細胞に反復する機械的な伸展刺激を加えることにより相対的な低酸素状態を作り出し、これに対する心筋細胞応答を解析したところ、心筋細胞からVEGFが放出されオートクライン的に作用することによりMAPKなどの細胞内情報伝達系を活性化することを明らかにした。(4) 虚血(再灌流状態)に対する心筋細胞応答を媒介する液性因子の血中動態:(A)急性心筋梗塞発症早期に再灌流療法を施行した患者の血清中のVEGF濃度を測定したところ、VEGFが虚血状態の鋭敏な指標となりうることが明らかとなった。また、このことは同時に(2)(A)の結果を裏付けることにもなった。
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