研究概要 |
本年度の研究目的はヒトの心不全症例のplasma soluble Fas(アポトーシスのinhibitor)およびsolulbe Fas-L(アポトーシスのinducer)を測定し、心不全の重症度と相関するか否か、また、それらが心筋組織から分泌されるか否かを明らかにすることである。上記のことを解明するために冠動脈疾患28例、拡張型心筋症27例、弁膜症15例による心不全患者70例およびコントロールとしての正常人62例を対象に、 1.sFasおよびsFas-L、さらにTNF-α、Interleukin-6のplasmaレベルを測定した。 2.sFasおよびsFasLが、心、肺等のどの臓器から分泌されるかを検討するためにfemoral artery,coronary sinus,pulmonary artery,renal veinから採血し、測定した。 その結果、1)plasma sFas-Lは心不全において正常範囲であったが、plasma aFasは疾患によらず、NYHA II、III、IVにおいて上昇し、上昇の程度はNYHA IVにおいて最大であった。2)肺動脈、大腿動脈、上行大静脈、冠状静脈洞で測定されたplasma sFas濃度はいずれに部位でも有意差がなかった。TNF-α、Interleukin-6はNYHAのIVの心不全例で上昇したが、sFasの上昇とは相関しなかった。 以上より、以下の結論を得た。 plasma sFasは心不全の程度に応じて上昇する。この上昇するsFasはアポトーシスの抑制を通じて、心不全の進行をブロックする要因として重要かもしれない。また、上昇するsFasの分泌部位が心であるか否かは確認できなかった。
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