心ファブリー病の発症機序を明らかにするために心臓所見と遺伝子異常を解析した。心ファブリー病の診断は血漿αガラクトシダーゼ活性測定にて行なった。2名(65歳、57歳)の男性ファブリー病(hemizygote)が見出され、症例1の血漿αガラクトシダーゼ活性は正常の8%、症例2は35%であった。遺伝子解析により、症例1ではαガラクトシダーゼ遺伝子のエキソン6のミスセンス変異(M296I)、症例2(57歳)ではエキソン2のミスセンス変異(E66Q)が同定された。症例1と症例2の2家系で遺伝子診断を行い、男性ファブリー病(hemizygote)と女性ファブリー病(heterozygote)と正常者を明らかにすることができた。症例1の家系では3名のheterozygoteの酵素活性は低値を示した。正常男性4名と正常女性2名は正常値を示した。症例2の家系ではhemizygoteの弟は低値を示した。しかしheterozygoteの3名は正常値を示したことより、遺伝子診断が必要であることが明らかになった。この2家系においては、hemizygote3名とも左室肥大を認めた。しかし、heterozygote6名では肥大を認めなかった。以上の結果より、1)遺伝子異常の違いにより、酵素活性値が異なること、2)heterozygoteでは酵素活性が正常値を示す症例が存在するために、遺伝子診断が有用であること、3)hemizygoteでは左室肥大を認めるが、heterozygoteでは肥大を認めないことが明らかになった。今後も、心Fabry病の表現型(phenotype)と遺伝型(genotype)の関係を明らかにする必要がある。
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