肥大型心筋症例の中からFabry病を見い出すために血漿を用いてα-galactosidase活性測定を行った。その結果、α-galactosidase活性が高度低下を示すFabry病が新たに見つかった。患者の白血球からDNAを抽出し、PCR法にて増幅し、エキソン1〜7の塩基配列を決定した。その結果、α-galactosidase遺伝子に異常が同定された。その遺伝子異常は今まで報告のない新しい点変異でエキソン5のF229LとD231Vであった。それらのFabry病の臨床病態は肥大型心筋症と酷似し、古典的Fabry病に認められる被角血管腫、四肢末端痛、低汗症、角膜混濁などの全身症状を欠く心Fabry病であった。肥大型心筋症の中に診断されていないFabry病が存在することが再度確認できた。心臓障害を明らかにするために、心Fahry病10例で心機能と形態を検討したが、6例(60%)と高率に左室短縮率低下(FS26%以下)を認めた。その6例中2例では後壁基部の非薄化も認められた。冠動脈の狭窄はなく、局所的に障害が強い機序は明らかではないが、対象の肥大型心筋症84例では認められなかったことから、この所見は心Fabry病に特徴的と考えられる。またこれら10例で心筋病理所見を検討した。その結果、心筋横径は27〜45μmと肥大し、全例に空胞化がみられた。繊維化も全例に認められ、心筋障害を生じていることを示していた。蓄積はトルイジン・ブルー染色と電顕像で評価したが、すべての心筋に認められた。
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