アンジオテンシンII2型(AT2)血管平滑筋過剰発現トランスジェニック(TG)マウス 血管平滑筋アクチンプロモーターを用いて血管平滑筋-AT2Tgマウス(SM-AT2Tg)の作製に成功した。AngII投与により野生型マウスの血圧は著しく(47%)上昇したが、驚くことにSM-AT2-Tgでは血圧上昇反応は全く消失していた。大動脈壁cGMP濃度は野生型ではAT2刺激(AT1拮抗薬+AngII投与)で有意に変化しなかったが、SM-AT2Tgマウスでは42%増加した。この増加はL-NAME+AngIIでも完全に抑制された。(結論)AT2の血管弛緩作用による血圧低下作用が明らかになり、この機序としてAT2を介するNO/cGMP系が関与することが初めて見いだされた。 不全心でのAT1・AT2発現・細胞局在と生理作用 心筋症ハムスター実験モデルでは左心室AT2量は心不全期でのみ対照と比較し35%有意に増加していた。一方、AT1量は肥大期でのみ増加(86%)し、心不全期には逆に減少した(33%)。不全心筋でのAngII受容体は心筋細胞より間質線維化巣の線維芽細胞に豊富に存在し、AT2がAT1より優位に発現していた、不全心筋より単離した線維芽細胞でのAT2刺激はDNA・蛋白合成だけでなくfibronectinやcollagen合成・分泌を約30%程度抑制した。AT2は不全心では心筋細胞よりも線維芽細胞に強く発現誘導され、自己細胞増殖やcollagen合成の抑制作用を通じて間質線維化の進展阻止に働くと考えられた。 まとめ 私達の個体・細胞レベルの研究によりAT2を介した心拍数増加の抑制効果や心筋線維化阻止作用が見いだされ、さらにNO-cGMP系を介した新たな機序での心保護作用が示唆された。AT2刺激がACE阻害薬によるbradykinin/NO/cGMP系活性化と同じ薬理作用を持つことはAT1受容体拮抗薬の心血管保護効果に関する新たな魅力を期待させる。
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