研究概要 |
慢性肉芽腫症遺伝子治療の基礎的研究として、gp91-phox欠損型慢性肉芽腫症患者から樹立したEBVB細胞株にMFGS-gp91とHa-MDR-IRES-gp91レトロウィルス・ベクターを用いて遺伝子導入実験を行った。 【方法】a-MDR-IRES-gp91/PA317は癌化学療法センター基礎部の杉本博士と共同で開発したもので、MFGS-gp91/293SPAは米国立衛生研究所のHarry L. Malech博士から供与されたものを用いた。培養は10%FBS添加X-VIVO10で行った。 遺伝子導入はMOI(Mulutiplicity of Infection)をMFGS-gp91/PA317で50,20,2,0とし,Ha-MDR-IRES-gp91では1とした。 導入効率を上げるためレトロベクターと細胞の培養プレートを32℃ 2,500rpm,30分の遠心操作を3日連続で合計6回行った。前者ではVincristine2.5ng/mlで3日間選択した。遺伝子導入後、monoclonal Abを用いたFACS解析でgp91-phoxの発現効率を、また化学発光法により活性酸素産生能の再構築を解析した。 【果および考察】MFGS-gp91はMOIが高いときほど遺伝子導入効率が良く、gp91-phoxの発現は、MOI=50で50-90%であった。 細胞株により、導入効率に差が認められ、増殖の遅い細胞では導入効率が下がる傾向にあった。 活性の再構築はおおむねgp91-phoxの導入効率によったが、実験の中には正常EBVB細胞より高い活性を示した細胞も観察された。 Ha-MDR-IRES-gp91による遺伝子導入実験では、第一回目のビンクリスチンによる選択で30%、第2回の選択では70-75%となり、約2倍に濃縮出来た。以上の結果から、遺伝子導入にはウイルス・タイタ-と細胞の増殖コントロールが重要な事が明らかになった。
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