高IgM症候群のうちX連鎖型の成因は活性化T細胞に発現するCD154分子の遺伝子異常によるが、多数例の検討から遺伝子変異の種類と臨床的重症度との相関を明らかにした。女性例ではX染色体と14番染色体との相互転座によりCD154遺伝子が断裂している例を発見した。他の例ではB細胞がIL-4とCD40への刺激によつてもIgEを産生せず、CD40シグナルに欠陥があることが予想された。CD40シグナルに関し、DNAの切断点修復に関与するku分子が、B細胞の活性化に伴ってCD40分子に会合していたものが解離し核に移行することを明らかにした。CD40シグナル異常を検索する上で手掛かりになると考える。活性化T細胞上のCD154分子を検出する方法はかなりの熟練を要するが、血清中でも遊離型CD154が検出でき、X連鎖型の本症ではそれが欠損していることを明らかにした。本症のスクリーニングに有用と考えられる。X連鎖無γグロブリン血症はB細胞の発生障害によるが、残存するB細胞はIL-4とCD40への刺激で十分免疫グロブリンを生成した。成因であるBtkチロシンキナーゼの欠損はB細胞の発生には重要であるが、機能発現への関与は少ないことを明らかにした。HLAクラスII欠損症ではT細胞はmitogenには正常に反応するが、抗原を提示すべきHLAを欠くため特異抗原に反応しえない。本症ではCD154分子の発現が不良であることを発見し、T細胞が未熟段階にとどまっていることを明らかにした。Wiskott-Aldrich症候群(WAS)とX連鎖血小板減少症(XLT)とはWASPの遺伝子異常によるが、WASPの機能は明らかでない。COS細胞への正常および変異遺伝子導入実験からWASPが細胞質骨格アクチンの重合に必要であること、Grb2・Btk・PIP_2と会合しシグナル伝達に重要であることを明らかにした。造血幹細胞からのin vitroコロニー形成実験からXLTでは巨核球コロニーが発生しうるが細胞突起形成に欠陥があることを明らかにした。
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