研究概要 |
Krabbe病のモデルマウスとして知られるtwitcherマウスは、リソソーム酵素であるガラクトセレブロシダーゼ(GALC)の遺伝的欠損による中枢・末梢神経の脱髄を主症状とし、寿命が6週前後と短いため、小児期死亡の単一遺伝子病に対する遺伝子治療のモデルとして優れている。本研究ではtwitcherマウス由来の骨髄細胞に対して、組換えレトロウイルスを用いてex vivoでヒトGALC cDNAを導入し、骨髄を標的細胞とした遺伝子治療を行い,その有効性を検討した。レトロウイルスベクターはヒトcDNAの2.2kb断片をG418遺伝子を含むpDL+に導入した。これを、パッケージング細胞に導入し,、6x10^5力価のウイルスを得、twitcherマウス由来の骨髄細胞にCH-296を用い感染させた。G418による選択を行い、酵素活性を測定する事により、twitcherマウス由来の骨髄細胞への遺伝子導入を確認した。遺伝子導入効率は約20%であった。これを出生前に母体内でbusulfanに暴露した生後1日目のtwitcherマウスの腹腔内に8×10^6細胞を移植した。その結果、twitcherマウスの主要病変部位である坐骨神経において、約43日でヒト遺伝子が確認され、GALC活性が約2倍に上昇した。病勢の指標となる体重曲線を、生後26日目、32日目で比較すると、遺伝子治療群は,未治療群、busulfan投与群に比し有意に体重増加が改善していることが示された。以上のことから、骨髄への遺伝子導入により、幹細胞より分化したマクロファージが罹患臓器である座骨神経に浸潤し、組織マクロファージとして長期に存在したと考えられる。しかし、この効果は寿命を延長するほどではなっかたと考えられる。
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