研究概要 |
1.ピリミジン代謝 1)ピリミジン代謝異常症の頻度: 前年度の1万例に加えて,さらに1万例の乳児マススクリーニングを実施した結果,新たなジヒドロピリミジン尿症(DHP欠損症ホモ)の1例1家系を診断した(3例/2万例).ウラシル尿症(DPD欠損症ホモ)は認めず,DPD完全欠損症は0/2万例の頻度であった. 2)DHP欠損症ホモの5例(成人2例)とその4家系のピリミジン代謝の検索: 平成9年度の研究期間中に新たな1例を診断し,5例4家系となった.2家系について,インフォームドコンセントのもとに,ウラシル負荷試験を実施した.尿中ウラシルとジヒドロウラシル値の自動分析にによって,ジヒドロウラシルの定量ができなかったためにウラシル負荷試験では診断できないと推定されていた,DHP欠損症のヘテロの診断が可能となった. 3)尿ピリミジン高値例(ハイリスク群)におけるピリミジン代謝異常症のヘテロの検索・診断: ハイリスク群のウラシルとジヒドロウラシル値(随時尿クレアチニン比)では対照群との有為な差は認めず,チミンとジヒドロチミンの比で対照群との解離が明かとなったが,随時尿ピリミジン分析ではヘテロの検出には限界があると結論した.しかし,本研究期間に尿5-FUと5-Fジヒドロウラシル(5-FDU)の同時自動定量分析法を確立したことと,上記2)の成績によって,5-FU初回投与2時間後の尿5-FUと5-FDUの定量によるDPH欠損症ヘテロとDPD欠損症ヘテロの診断が可能と思われた.以上の研究成果により,5-FUの副作用の早期予知・防止のための研究基盤が確立した. 2.遺伝子解析 5-FU中毒と末梢単核球DPDの活性低下を認めた1例とその家系において,新たなDPD遺伝子変異を確定した.またDHP欠損症の5例とそれらの4家系の遺伝子解析により,変異を確定した.
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