研究概要 |
平成9年度における主たる成果は以下の3つである. 1.Xp22.3に想定される非特異的知能障害遺伝子候補の単離 われわれは,Xp22.3領域に微小欠失を有する男性患者計18例を国内外から集積し,詳細な遺伝子型-表現型解析により非特異的知能障害遺伝子を,約200kb領域に限局した.その後,同領域を包含するPACおよびコスミドから成る連続切片を世界で初めて作製し,この連続切片を用いたエクソントラッピングにより,新しい遺伝子を発見した.この遺伝子は,Y染色体上に相同遺伝子を有するが,両者は3'領域の構造で異なり,また,脳を含む広汎な発現はX染色体上の遺伝子のみに認められた.これは,X染色体上の遺伝子が真の遺伝子であり,Y染色体上の遺伝子は進化に伴い機能を失った偽遺伝子であることを示唆する. 2.Xp21.3に想定される非特異的知能障害遺伝子の限局化 Xp21.3の微小欠失と知能障害を有する2家系の解析から,同領域の非特異的知能障害遺伝子を,DXS7102からDXS319の約4Mb領域に限局した.また,保因者女性の軽度知能障害が,X染色体の不活化による同遺伝子の発現量低下によることを示した. 3.Xp22.3上の症候性知能障害遺伝子(MLS)の成因の解明 Microphthalmia with linear skin defects(MLS)syndromeと45,X/46,X,r(X)(p22q21)/46,X,del(X)(p22)核型を有する女児において,PCRを用いたX染色体不活化の検討を行ない,正常X染色体の不活化がMLS syndromeにおける知能障害において決定的な役割をしていることを明らかにした.
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