研究課題
本年度は遺伝性脳変性疾患のうちゴ-シェ病について検討を加えた。本症を遺伝子治療していくうえでどの程度の蛋白発現量(酵素量)が必要かを同定することは根本的に重要である。そこで酵素補充療法をおこなっている日本人11例について酵素投与量と臨床的効果について検討を加えた。すなわち60U/kgを継続的に投与した長期投与群(3例)、60U/kgを6ヶ月間投与しその後30U/kgを1年間、そして15U/kgを維持療法として投与した中間群(5例)、60U/kgを6ヶ月以内に減量し、維持療法に移行した短期投与群(3例)の臨床効果を比較した。長期投与群に比べ中間投与群、短期投与群においてはヘモグロビン値、血小板増加率、酸性フォスファターゼ値、身長増加率の改善度は統計学的有意差をもって劣っていた。さらに短期投与群3例全例において治療にもかかわらず酵素量の減量に伴って骨合併症を生じていた。また骨髄移植を施行した3例のうち1例では不完全生着のため残存酵素活性は30%程度しか上昇せず、骨髄移植後骨合併症を生じていた。これらの酵素補充療法および骨髄移植療法の治療効果の検討から、ゴ-シェ病の遺伝子治療においてはCD34陽性細胞に導入したグルコセレブロシダーゼ遺伝子の十分な発現が得られなければ臨床的効果は十分に得られないことが考えられた。
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