研究課題
遺伝性脳変性疾患の遺伝子病態並びに遺伝子治療に関する今年度の研究として日本人リソゾーム病、特にゴーシェ病の遺伝子変異と臨床症状との相関、酵素補充療法の神経症状に対する効果及び異染性白質変性症の遺伝子変異について検討した。またスライ病の遺伝子治療に関する基礎的検討を行った。日本人ゴーシェ病においては軽微な臨床症状を呈するN370変異が全く存在しないため欧米人に比較し重症度が高いことを明らかにした。急性神経型ゴーシェ病の酵素補充療法の効果を臨床的、病理学的に検討したところ酵素療法は神経症状の改善には効果がなく、治療例でも広範な神経細胞の脱落が認められることを明らかにした。アリルスファターゼA欠損によって発症する異染性白質変性症の日本人症例11例の遺伝子変異分布を解析し、G99D変異が日本人に多く認められることを明かにするとともに2つの新しい遺伝子変異を同定した。スライ病の動物モデルに対してレトロウイルスベクターにグルクロニダーゼを組み込み、ヒト臍帯血より分離、精製した造血幹細胞(CD34性細胞)を標的臓器として遺伝子治療を試みた。導入効率はCFU-GMで平均66.8%、LTCIC(long-term culture initiating cell)では20%と50%であった。グルクロニダーゼ活性は5週間正常レベルを維持していた。以上の遺伝子治療に関する基礎的実験データは遺伝性脳変性疾患における遺伝子治療の可能性を示唆するものであった。
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