研究概要 |
自己反応性T細胞クローンを同系マウス足蹠に局所移入することにより生ずるT細胞による表皮の傷害は皮膚GVHDの所見を呈する。このモデルにおいてDVHDから回復したマウスの表皮は以後の自己反応性T細胞クローンの侵入に対して抵抗性(GVHD抵抗性)となる。本年度の研究ではこれらの過程においてFas・Fasリガンドの発現がどのように関与しているかを明らかにしたいと考えた。 1.自己反応性T細胞クローンの移入により表皮細胞にはFas発現が誘導された。一部の表皮細胞にはFasLの発現も認められた。移入した自己反応性T細胞クローンにはFas,Fas Lともに発現が認められた。 2.Fas発現異常を認めるB6 lpr/lpr(Fas^-)マウスに自己反応性T細胞クローンを移入し、GVHDの誘導及び回復後のGVHD抵抗性の発現が認められるかを検討した。GVHDの誘導は認められたが、B6 wild type(Fas^+,Fas L^+)と比べGVHDの程度がやや軽度であった。GVHD回復後の抵抗性の発現はB6 lpr/lprでは全く認められなかった。 3.Fas L発現異常を認めるB6 gld/gld(Fas L^-)マウスを用いて同様の検討を行った。GVHD誘導及びGVHD抵抗性発現に関してはB6 wild type(Fas^+,Fas L^+)と同様の所見が得られた。 4.Fas Lに対する抗体をGVHD誘導及び、GVHD抵抗性発現の際に投与し、その効果を検討した。GVHD誘導に関しては軽度の抑制と炎症の遷延化が認められた。また抵抗性発現の際に抗FasL抗体を投与することによりある程度の抑制効果が認められた。 以上の結果からGVHDの誘導及びGVHD抵抗性発現にはFas・Fas Lの発現が重要であり、とくに抵抗性の発現にはFasの発現が重要であることが明らかになった。
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