研究概要 |
神経線維腫症は全身に多発する神経線維腫,カフェ・オ・レ斑と呼ばれる褐色の色素斑のほかにも中枢神経病変,眼,骨などの病変がみられる常染色体優生の遺伝性疾患である.本症は,きわめて発症頻度の高い疾患であり,わが国には4万人程度の患者がいるものと推定されている.また,本症患者にみられる症候は多彩であり,個々の患者にみられる症状の程度の差も著しい.臨床的には皮膚に神経線維腫が多発するもの,大型のびまん性神経線維腫がみられるもの,末梢神経内の神経線維腫が主体をなす症例などがあるが,これらはすべて神経線維腫症1 (neurofibromatosis 1,NF1,レックリングハウゼン病)であって,17番染色体の長腕の17q11.2に座位する遺伝子の変異によることが明らかになっている.われわれは34例のNF1患者の末梢血白血球分画より抽出したconstitutional DNAを被検試料として,mutagenically separated-PCR法とfluorescence in situ hybridization(FISH)法を用いて,全てのNF1エクソンについて検索した結果,2例で遺伝子の全欠損と考えられるlarge deletionが確認された.また,稀にカフェ・オ・レ斑が体節に限局して片側性にみられる症例があり,こうした症例はNF1のモザイクであろうと考えていたが,このような母親から典型的なNF1の児が生まれた2家系を経験し,NF1遺伝子の検索を行っている. 日本人のびまん性神経線維腫は褐色調を呈するものが多い.こうした色素性神経線維腫にはメラニン色素を有する細胞が散在性あるいは集塊をなして認められるが,これらの細胞のについて,電子顕微鏡学的,免疫組縁学的に検索した結果,メラニン含有細胞はるシュワン細胞様細胞に由来するものと考えた.
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