研究概要 |
神経線維腫瘍2(neurofibromatosis2,NF2)は両側性聴神経腫瘍以外に脳神経の神経鞘腫、髄膜腫、脊髄根神経鞘腫、白内障、皮膚の神経鞘腫がみられる常染色体優性遺伝性疾患で,50,000〜100,000に1人の頻度でおこる。NF2遺伝子のcDNAは1,789bpで,100kbにまたがり,17のエクソンよりなっている。腫瘍発生機構はKnudsonが提唱したtwo-hit説があてはまり、癌抑制遺伝子の特徴をもっている。臨床的に発症が20歳以下で,腫瘍数も多い早発型(Wishart型)と発症が20歳以降で,腫瘍数も少ない遅発型(Gardner)に分類される。早発型は、重症で致死率が高く、その遺伝子変異はフレームシフトやナンセンス変異であり、NF2遺伝子産物であるmerlin蛋白が作られない場合に多い。一方、ミスセンス変異やイントロン内の変異でC末端が保存されている場合は、軽症になる。神経鞘腫症は、両側性聴神経腫瘍がなく、皮膚に神経鞘腫が多発する疾患で、我々は神経鞘腫症の遺伝子解析を行った結果、7例中4例にgerm line mutationを検出している。これらの症例は遅発性で、軽症でありGardner型と考えられるが、その4例中1例はbig delationがみられ、他の1例は、ナンセンス変異が認められた。一方両側性聴神経腫瘍を認めるNF2患者6例では、big delationがみられた1例が、重症型であった。残りの5例は遺伝子変異が検出されなかったが、5例中3例は重症型であった。従って、遺伝子変異の種類で、その重症度は判定できなかった。
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