本研究では白血球、血栓と反応するモノクローナル抗体より、遺伝子工学の手法で抗原と反応する10数個のアミノ酸(ペプチド)を解析。アイソトープ(RI)で標識したペプチドを用いた炎症、血栓の新しい画像診断法、治療法を開発することを目的とした。 まずRI標識ヒト型抗体の画像診断としての臨床的有用性を検討するため、マウス由来の抗白血球抗体を遺伝子工学の手法を用いてヒト型化。テクネシウム-99m(^<99m>Tc)で標識し、施設の倫理委員会の許可を得た後、主として炎症・感染症患者を対象にRI標識ヒト型抗体の臨床的有用性を検討した。 ^<99m>Tc標識した抗白血球抗体は正常骨髄および炎症巣に集積し、^<99m>Tc標識抗白血球抗体を用いる画像診断は、炎症の診断に有用である。さらに骨転移部位は欠損像となるため、本法は前立腺癌、乳癌、肺癌の骨転移の画像診断としても役立つことが明らかとなった。なおこれまでのマウス由来の抗体では、投与された80%の患者の血中に抗マウス抗体が検出されるのに対し、ヒト型化抗体では患者血中に抗マウス抗体が検出されず、安全に使用することができることが明らかとなった。抗原と反応する遺伝子を取り出し、アミノ酸分画より抗原と反応する蛋白質を作成したが、RI標識すると凝集し、炎症、血栓の画像診断に臨床応用できるRI標識ペプチドの作成には我々も含めてまだ世界でも成功していない。 細胞障害性の強いレニウム-186(^<186>Re)をキレート剤に標識し、癌の骨転移部に結合させることができた。^<186>Re-キレート剤は骨転移による痛みの治療に有効なものと期待される。
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