本研究ではP53ノックアウトマウス由来線維芽細胞およびこれにワイルドタイプおよびミュータントタイプP53をトランスフェクトした細胞を用い、放射線照射および化学療法剤の単独および併用効果に対するP53の寄与について検討する。また、wild type p53の発現の有無と低酸素条件下における放射線およびbioreductive agentsの単独および併用効果(特にDNA障害からのrepair)との関連について検討した。 1)DNAトポイソメラーゼI阻害剤SN-38 200nMと放射線の併用効果はプラトー期の細胞には認められず、一方対数増殖期の細胞には相乗効果が認められる細胞と、認められない細胞があることが明らかになった。 2)p53ノックアウトマウス由来の線維芽細胞由来の4種類のp53のステータスのみ異なる細胞に対する薬剤単独の毒性は対数増殖期ではいずれも大きな差異を認めなかった。また、放射線単独効果も差異を認めなかった。 3)放射線との併用効果は、一部の実験では差異が予測されたが、追試を繰り返したところ、いずれの細胞でも弱い相乗効果が認められた。フローサイトメトリで細胞周期にたいする放射線と薬剤との併用効果を見たところ、SN-38と放射線の併用では、それぞれ単独よりG2 blockを増強することが示された。しかしながら、処置後のアポトーシスの頻度はSN-38と放射線の併用およびそれぞれ単独処置何れでも、この細胞系では差異が認められなかった。 4)上と同様の細胞を常酸素状態および低酸素状態でTirapazamineで処理したところ、いずれのp53ステータスの細胞においてもTirapazamineは低酸素細胞に有効であることが明らかになった。 以上より、CPT-11およびTirapazamineはp53のステータスとは無関係に放射線との併用が有効であると考えられた。
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