研究概要 |
悪性腫瘍の内科的治療法としては、放射線治療と化学療法の併用療法が主流となりつつある。当研究は、新しく開発され、近い将来放射線治療と併用して使用される可能性の高い薬剤や既に放射線治療と併用されているエトポシドについて、実験腫瘍モデルを用いて、放射線との併用効果と最適の併用法について検討することを目的とした。新しい抗腫瘍剤としては、5-FU系のエミテフ-ル、白金製剤のネダプラチン、カンプトテシン誘導体のトポテシンについて検討を予定した。これらのなかで、今年度は特にエミテフ-ルについて詳細に検討した。マウスのSCCVIIおよびEMT6腫瘍に対して、25mg/kgの同薬剤を、5または10日間連日投与あるいは12時間おきに4回投与すると、明らかな抗腫瘍効果が認められたが、これを4Gy,5日間、2.8Gy、10日間、あるいは12時間おきに5Gy、4回のそれぞれの放射線照射の前に投与すると、抗腫瘍効果は著明に増強した。この効果の増強は150mg/kgのエミテフ-ルを単回投与で放射線照射と併用した場合よりも大きいと考えられた。ただし、12.5mg/kgの投与量で、同じプロトコールで併用しても、効果はわずかであった。これらの結果より、エミテフ-ルはある程度の投与量以上(恐らく400mg/日以上)で放射線治療と連日併用した場合、高い抗腫瘍効果が期待できると考えられた。新しい薬剤については、単回投与にて予備的実験を行ったが、トポテシンは50および100mg/kgの投与量では、SCCVII腫瘍に対して効果が少なかった。ネダプラチンは30および60mg/kg、エトポシドは100および150mg/kgの投与量にて検討したが、共に効果はあるものの、過半数のマウスが死亡した。したがって分割投与および分割照射との併用実験に用いる薬量については、次年度にさらに検討が必要と考えられた。
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