前年度の研究で、新しい5-FU系抗癌剤エミテフールと放射線が優れた併用効果を示したことから、今年度は放射線照射によって活性化され5-FUを放出する化合物OFU00l、1-(2'-オキソプロピル)-5-フルオロウラシルについて重点的に検討した。この化合物は低酸素状熊における放射線照射によって、5-FUに変換されると考えられる。すなわち低酸素状態での放射線照射の際に生じる水和電子が化合物内に取り込まれ、これが側鎖の化学結合の部分に移動し、化学結合が不安定となって水素原子で置換されることによって、5-FUとなると考えられる。当研究においては、放射線照射によるリン酸緩衝液中の同化合物の分解と5-FUの生成をHPLCで検討し、放射線照射後の同薬剤のin vitroにおける効果をマウスSCCVH細胞を用いて、コロニー形成試験によって検討した。OFU001の基質分解は、低酸素状熊のみならず、有酸素状熊においても観察されたが、5-FUの生成は低酸素状態で顕著に認められたのに対し、有酸素状態ではわずかであった。低酸素状態におけるOFU001の基質分解のG値(100keVの放射線エネルギーによって変換または生成される分子の数)は3.5であり、5-FU遊離の(G値は1.8であった。薬剤を低酸素状態で30Gy照射後、SCCVH細胞と3-6時間接触させると、細胞生存率は40%に低下したが、有酸素照射では生存率は85%であった。低酸素状態でOFU001を7.5、15または22.5Gy照射した場合、線量の低下とともに効果は減少したが、これらの線量においても殺細胞効果は認められた。 またユーゴスラヴィアのクラグイェヴァチ大学腫瘍科において行われた食道癌、肺癌に対する放射線と化学療法の併用に関する臨床試験について分析を行ったが、いずれも放射線と化学療法の併用によって従来の放射線治療単独の成績を上回ると考えられる結果が得られた。
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