新しい抗癌剤エミテフールと放射線治療との併用について基礎的に検討した。マウスSCCVIII及びEMT6腫瘍に対して、25mg/kg同薬剤を、5または10日間連日投与あるいは12時間おきに4回投与すると、明らかな抗腫瘍効果が認められたが、これを4Gy、5日間、2.8Gy、10日間、あるいは12時間おきに5Gy、4回のそれぞれの放射線照射の前に投与すると、抗腫瘍効果は著明に増強した。ただし12.5mg/kgでは、同様に併用しても効果はわずかであった。以上より、エミテフールはある程度の投与量(恐らく400mg/日)以上で放射線治療と連日併用した場合、高い抗腫瘍効果が期待できると考えられた また5-FUのプロドラッグOFU001、1-(2'-oxopropyl)-5-FUについて検討した。この化合物は、低酸素下放射線照射の際に生じる水和電子を取り込むことにより側鎖が切断され、5-FUになる。OFU001の放射線による基質分解は、低酸素、有酸素状態のいずれにおいても観察されたが、5-FUの生成は低酸素状態で顕著に認められたのに対し、有酸素状態ではわずかであった。低酸素状態におけるOFU001の基質分解のG値は3.5であり、5-FU遊離のG値は1.8であった。薬剤を低酸素状態で30Gy照射後、SCCVII細胞と3-6時間接触させると、細胞生存率は40%に低下したが、有酸素照射では生存率は85%であった。低酸素状態でOFU001を7.5、15または22.5Gy照射した場合、線量の低下とともに効果は減少したが、殺細胞効果は認められた。 またユーゴスラヴィアのクラグイェヴァチ大学腫瘍科において行われた食道癌、肺癌に対する放射線と化学療法の併用に関する臨床試験について分析を行ったが、いずれも放射線と化学療法の併用によって従来の放射線治療単独の成績を上回ると考えられる結果が得られた。
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