研究概要 |
近年、老化、および糖尿病性慢性合併症の成因として注目されている、蛋白質の非酵素的糖化反応物質,特に、その終末糖化物質(Advanced Glycosylation Endproducts、以下AGEと略す)がアルツハイマー病の病因になっているとする報告がなされている。しかし、AGEの構造体中には、高血糖から形成される構造体のほか、ブドウ糖からよりは脂質の過酸化反応より主に形成されるCMLが報告されている(J Biol Chem271:9982-86,1995)。過去に作成されたAGE特異抗体の多くはCMLを認識するが、CMLの糖尿病合併症に対する意義に関しては否定的報告が提出されている(J Clin Invest,100:839-46,1997)。従って、AGE阻害剤の評価においてはCMLとCML以外のAGE構造体の両者を比較する必要がある。平成9年度には、CMLとCML以外のACE構造体の両者をそれぞれ認識する、CMLおよびnon-CML AGE抗体を作成した。この2種の抗体によりELISAを開発し、生体内のAGE測定を行った。この結果、血液中のCMLとnon-CML AGEには局在や測定値に大きな差異を認め、non-CML AGEが過去2ヶ月の平均血糖値と強い相関が認められたのに比しCMLにおいては平均血糖値、HbAlc値との有為な相関は認めなかった。以上の結果から高血糖に由来するAGEの評価にはnon-CML AGEが重要と考えられた。この詳細について論文投稿中である。従ってアルツハイマー病の病因としてAGEが関与するか否かをnon-CML AGE特異抗体を用い病理組織学的に検討した。アルツハイマー病患者、アルツハイマー病類縁疾患患者(progressive supranuclear palsy,Pick's disease,Guamanian amyotrophic lateral sclerosis/parkinsonism-demetia complex)の脳組織のAGE沈着の有無、局在を検討しアルツハイマー病患者のみならずアルツハイマー病類縁疾患患者にもnon-CML AGEの沈着を認めた。さらに同時にtau、ubiquitin、Aβに対するモノクローナル抗体を用い、これらの脳組織の免疫組織学的染色を行い、AGE沈着を比較検討中である。
|