前駆体活性化酵素FurinはプロホルモンコンベルターゼPC2、PC3と同じ酵母kex2ファミリーに属する。PC2とPC3は神経内分泌細胞に特異的に発現し、分泌顆粒内に存在するが、furinはほとんどの細胞で発現し、TGN膜に局在し、構成性経路で輸送される前駆体を切断し、活性型に転換する。FurinはPTHrPやTGFβなどの増殖因子、インスリン受容体や、HGF受容体c-Met、カドヘリンやインテグリンα3とα6などの接着因子等の前駆体を活性型に転換する。膵β細胞でFurinの基質となる増殖・分化関連前駆体蛋白としては、PTHrPとTGFβが侯補となる。 Furinの高発現と細胞増殖の関係はインスリノーマで見られる。我々は20例のヒト膵内分泌腫瘍を集め、10例のインスリノーマ全例でfurinとその基質であるPTHrPが高発現していることを観察した。Furinが増殖と関連しているもう一つの例として、我々はfurinがラット胎児18日-21日目、及び出生後1日-3日目で高発現し、更にこの時期ではBrdU取込みによってβ細胞の増殖が盛んであることを見出した。即ちfurinは完成期に近い膵島で増殖分化因子の活性化に関与している可能性を示唆した。 Differential display法によりM1N6-17と、PTHrPを作用させたM1N6-17でMAPキナーゼに特異的なフォスファターゼが高発現していることを見出した。このフォスファターゼをアデノウィルスベクターを用いてMlN6-17で発現させると、インスリン発現とインスリン含量が増加した。このインスリン含量は正常膵β細胞の含量に匹敵するものであり、M1N6-41を用いた場合にはこの現象は観察できないことから、MAPキナーゼフォスファターゼはβ細胞高次機能の完成に近い時期に作用しているものと考えられる。
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