研究分担者 |
石原 寿光 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
片桐 秀樹 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
佃 克則 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
荻原 健英 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
船木 真理 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
|
研究概要 |
インスリンによる糖代謝促進作用にはp85/p110タイプPI-キナーゼの活性化が不可欠である。そこで、(1)インスリン抵抗性状態におけるp85/p110タイプPI-キナーゼの活性化の変化、及び(2)p85/p110タイプPI-キナーゼによるリン酸化リン脂質含量の変化とこれらによって導かれる細胞活動を検討した。 (1)インスリン抵抗性状態におけるp85/p110タイプPI-キナーゼの活性化の変化 日本人におけるインスリン抵抗性要因として代表的なものは肥満と高脂肪食である。我々は過食による肥満動物においては、肝臓、筋肉、脂肪のいずれにおいてもp85/p110タイプPI-キナーゼの活性化が高度に傷害されていることを報告した。一方、高脂肪食では筋肉、脂肪においては軽度から中等度の活性化傷害が認められるが、肝臓においては逆に活性化が亢進していることを見いだした。これは、高脂肪と過食では、同様にインスリン抵抗性をきたすものの、その分子機構が大きく異なっていることを示唆するものである。 (2)p85/p110タイプPI-キナーゼによるリン酸化リン脂質含量の変化 我々はp85/p110タイプPI-キナーゼによってPI3-P、PI3,4-P2,PI3,4,5-P3の他、PI4-PやPI4,5-P2も顕著に増加することを見いだした。すなわち、p85/p110タイプPIキナーゼはin vivoにおいては、高いPI4-キナーゼ活性を有している可能性が高い。また、p85/p110タイプPI-キナーゼの有するPI4-キナーゼ活性はactinのrearrangementやglucose transporterの細胞膜上への移動などのインスリン作用に密接に関連していることが明らかになった。これらの報告は非常に画期的なものであり、今後さらにインスリンの作用機序や抵抗性機構の解明のbreakthroughとなる知見である。
|