研究課題/領域番号 |
09470215
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
門脇 孝 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (30185889)
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研究分担者 |
寺内 康夫 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
安田 和基 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
為本 浩至 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
戸辺 一之 東京大学, 医学部・附属病院, 助手
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キーワード | グルコース応答性インスリン分泌 / 糖尿病モデル動物 / 遺伝子ノックアウトマウス / NADHシャトル / グリセロールリン酸シャトル / リンゴ酸・アスパラギン酸シャトル / ミトコンドリア・グリセロールリン酸脱水素酵素 |
研究概要 |
【目的】日本人NIDDMは、病初期よりの膵b細胞におけるグルコース応答性インスリン分泌低下を特徴とするが、その成因にグリセロールリン酸(GP)シャトルおよびリンゴ酸・アスパラギン酸(MA)シャトルからなるNADHシヤトルの機能不全が関与する可能性が指摘される。グルコース応答性インスリン分泌におけるNADHシャトルの意義を、GPシャトルの律速酵素であるmitochondrial glycerol-3 phosphate dehydrogenase (mGPDH) 遺伝子欠損マウスを作製して解析した。 【結果】mGPDH欠損マウスは正常耐糖能であり、膵島のグルコース応答性インスリン分泌も正常であった。MAシャトルの阻害剤であるアミノオキシ酢酸(AOA)存在下での野生型マウス膵島のインスリン分泌も障害されなかった。しかし、mGPDD欠損マウス膵島にAOAを作用させ、両シャトル活性を停止させると、インスリン分泌はほぼ廃絶した。この際、グルコースの解糖系での利用およびミトコンドリア内での酸化には有意な障害は認められなかったが、TCAサイクルでのグルコース酸化は42%に低下していた。また、グルコ一ス応答性のNAD(PH)Hの産生およびミトコンドリア内膜過分極の形成は約25〜30%に低下しており、ミトコンドリア内へのCa^<2+>流入ほはとんど消失していた。膵島ATP含量の増加も、約40%に低下していた。 【考察】NADHシャトルは、TCA回路および酸化的リン酸化を含むミトコンドリア・エネルギー代謝の活性化を介して、膵島グルコース応答性インスリン分泌に必須であることが初めて示された。膵b細胞に流入したグルコース濃度情報は、古典的に考えられていたようにピルビン酸としてではなく、主としてNADHとしてミトコンドリアに伝達されて、代謝性シグナルであるATPを産生すると考えられた。
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