研究課題/領域番号 |
09470215
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
門脇 孝 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (30185889)
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研究分担者 |
寺内 康夫 東京大学, 医学部附属病院, 医員
安田 和基 東京大学, 医学部附属病院, 医員
為本 浩至 東京大学, 医学部附属病院, 医員
戸辺 一之 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (30251242)
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キーワード | IRS-2欠損マウス / インスリン感受性 / インスリン抵抗性 / NADHシャトル / インスリン依存的糖輸送 / グリセロールリン酸シャトル欠損マウス / 低血糖 / PI3キナーゼp85α調節サブユニット欠損マウス |
研究概要 |
本研究では発生工学を用いてインスリン作用やインスリン分泌に関する遺伝子を操作した動物モデルを作製し、糖尿病の成因や病態を個体レベルで解析した。 IRS-2(Insulin receptor substrate-2)欠損マウスの作成:IRS-1とIRS-2はインスリン受容体チロシンキナーゼの主要な基質であり、受容体以後のシグナル伝達の最初のステップとして重要と考えられている。IRS-1欠損マウスは、インスリン抵抗性が存在するものの、耐糖能は正常に保たれていた。これは膵β細胞過形成によりインスリン分泌が十分に保たれているからであった。一方、本年度IRS-2欠損マウスの作成に成功した。ヘテロIRS-2欠損マウスは特に明らかな表現型を認めない。ホモIRS-2欠損マウスは現在3週令であり今後詳細に解析を行う。 グリセロールリン酸シャトル欠損マウス:mGPDH欠損、すなわちGP(グリセロールリン酸)シャトル欠損マウスを、ジーンターゲティングの手法を用いて作製した。GPシャトル欠損マウスにMA(リンゴ酸-アスパラギン酸)シャトルの阻害薬であるアミノオキシ酢酸(AOA)を併用することにより、膵島で両方のNADHシャトル機能を停止させると、グルコース応答性インスリン分泌はほぼ完全に廃絶した。このようにNADHシャトル機構は、グルコース応答性インスリン分泌に必須であることがはじめて明らかにされた(Science 283:981-985,1999)。PI3キナーゼp85α調節サブユニット欠損マウス:PI3キナーゼp85α調節サブユニット欠損マウスは正常に生まれ、成長や行動に異常を認めなかったが、インスリン感受性亢進と低血糖を認めた。骨格筋や脂肪細胞でのインスリン依存的糖取り込み能が亢進していたが、これは脂肪細胞内でのGLUT4 translocationのexocytosis経路が亢進しているためであった。インスリン依存的にIRS-1と結合する調節サブユニットは野生型ではp85αであったのに対し、欠損マウスではp85αのaltemative splicing isoformであるp50αであった。欠損マウスではPI3キナーゼ産物であるPI(3,4,5)P_3の産生が増加しており、この結果、GLUT4 translocationが亢進したと推測された。PI3キナーゼ活性化が個体レベルでのglucose homeostasisやインスリン依存的糖輸送に強く関与していることが証明された(Nature Gcnetics21:230-235,1999)。
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