研究課題/領域番号 |
09470218
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
吉川 隆一 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50093406)
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研究分担者 |
前田 士郎 滋賀医科大学, 医学部, 助手
古家 大祐 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (70242980)
羽田 勝計 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (60164894)
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キーワード | 糖尿病性腎症 / TGF-β / メサンギウム細胞 / 糸球体高血圧 / 周期的伸展刺激 / 遺伝子発現 |
研究概要 |
本研究は、糖尿病の腎糸球体およびブドウ糖過剰状態で培養したメサンギウム細胞におけるTGF-β発現増強機構を、特に糖尿病に特有の代謝異常を中心に、分子レベルで解明することを目的とし、昨年度は糖尿病状態におけるTGF-β発現増強を確認すると共に、TGF-β遺伝子5'上流転写調節領域を含むconstructの作成を開始した。本年度は、まず糖尿病モデル動物の腎糸球体で増加しているTGF-β発現に関し、その機序をインスリン感受性増強剤であるtroglitazoneを用いて検討した。STZ糖尿病ラット腎糸球体では、PKC,extra-signal regulated kinase(ERK)が活性化され、TGF-βのmRNA発現が有意に増加していた。TroglitazoneでSTZ糖尿病ラットを治療すると血糖値には変化を与えずにPKC,ERKの活性化は阻止され、TGF-β発現増加も抑制された。In vitroでは、高糖濃度条件下或いは周期的伸展刺激を加えたメサンギウム細胞で、TGF-βおよびfibronectinのmRNAおよびfibronectin蛋白量の増加をみとめた。さらに周期的伸展刺激により細胞内情報伝達に重要な役割を果たすと考えられているERKや転写因子AP-1の活性化が引き起こされた。ERK活性化を阻害するPD098059はAP-1活性化を阻止するとともに、TGF-βやfibronectinの発現をも抑制した。これらの成績から、糖尿病状態における細胞内代謝異常特にPKC活性化、および糸球体高血圧に起因する圧負荷(周期的伸展刺激)の両者が、TGF-β発現増加に関与している可能性が推察され、その機序としてERKを介した転写因子AP-1の関与が示唆された。今後分子レベルでの調節機序を明確にする目的で、TGF-β遺伝子5'上流転写調節領域を含む3種類のluciferase constructを用い、TGF-β遺伝子発現調節機構の詳細な検討を開始している。
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