研究概要 |
糖尿病は遺伝因子と環境因子の相互作用により発症し、しかも遺伝因子が複数の疾患感受性遺伝子により構築されている多因子疾患である。このような多因子疾患の遺伝子解析を効率よく進めることを目的として、従来単一遺伝子疾患に用いられてきた手法とは異なる新たな解析ストラテジーをモデル動物・ヒトの両面から構築し、糖尿病の疾患感受性遺伝子の解析に応用した。2型糖尿病のモデル動物NSYマウスとコントロールのC3H/Heマウスとの交配実験により作出した307匹のF2マウスを対象にゲノムワイドのQTLマッピングを行った結果、耐糖能を規定する3つの遺伝子座(Nidd1,Nidd2,Nidd3)を同定することに成功した。また、疾患の候補臓器における遺伝子発現量の変化を簡便かつ鋭敏に検出する新たなサブトラクション法を開発し、膵β細胞でグルコース特異的に発現量の変化する遺伝子の同定に成功した。この方法で得られたクローンの中でゲノムにマップされた疾患感受性遺伝子と局在の一致するものを抽出することにより、疾患遺伝子の同定が大きく加速されることが期待される。軽微な変異あるいは多型であることが予想される多因子疾患の疾患感受性遺伝子と疾患との関連をヒトにおいて証明する目的で、遺伝子型と疾患の関連に関するメタ解析法を確立し、アンジオテンシン変換酵素の挿入・欠失多型が糖尿病性腎症に有意の関連を示すことを5000例以上の対象者において証明した。さらに、この方法を量的形質へと展開して、遺伝子型と量的形質との関連を検討するための新たなメタ解析法を確立し、β3アドレナリン受容体のTrp64Arg変異が肥満度と有意の関連を有することを9000例以上の対象者において証明した。
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