研究概要 |
拮抗型GH異常症例の解析 Arg77Cysのヘテロ接合体の異常成長ホルモン(GH)により成長障害を起こしたと考えられるユニークな症例を報告した。本変異は発端者の父にも認めたが父方祖母の遺伝子解析を行った結果この変異を認めなかった。したがって父のphenotypeやGH mRNA,蛋白が正常であった理由はuniparental disomyでは説明できず、somatic mosaicismの可能性が高いと考えられた。 また本例に治療目的でGHを投与した結果、通常量では血中IGF-I値はわずかに増加しただけであったが、4倍量まで漸増した結果、血中IGF-I値は170より460ng/mlまで増加し、臨床的にも本例の拮抗型GHによる病態に一致する結果であった。 GH受容体(GHR)異常症例の解析 GH結合蛋白(GHBP)高値を呈するGH不応症の兄妹例で、GHR遺伝子intron 9のdonor siteのヘテロ接合の変異によるsplice異常でexon 9のskipとframe shiftが生じ、GHR-277が発現する症例を報告した。この変異GHRはJak2との会合や、internalizationに必須のbox-1や-2を欠くためsignal伝達障害のみならず、膜上に留まることでdominant negative作用、酵素分解によるGHBP生成増加が推測された。そこでこの変異GHRをCos-7細胞に一過性に強制発現させ野性型と比較したところ、培養液中のGHBP濃度は有意に高く、またinternalizationの障害も確認された。さらに変異GHRを野性型とGHO細胞に共発現させ、GHのsignal伝達分子の一つstat-5のリン酸化を指標にdominant negativeに作用するか検討中である。
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