研究概要 |
NODマウスの遺伝的背景で作成されたTg(NOD-IL-10-Tg)、およびII型糖尿病モデルマウスのdb/dbマウスを対象として、IL-10あるいは変異OB-Rの遺伝子発現下で糖尿病発病を修飾する、複数の糖尿病病因遺伝子の座位を、多因子連鎖解析の方法で解析し、新たな糖尿病発症の候補遺伝子を探索する目的で検討を行い、現在までに以下の知見を得た。 1) F2バッククロスおよびインタークロスマウスの作成 糖尿病を発症するNOD-IL-10-TgをMHC Class IIのIEα^dを発現するNOD-IE-Tgの遺伝的背景で維持し、NOD-IE-Tg(hemi-Tg)とC57BL/6マウスと交配させたF1の内、IEα^dを有さないF1をNODマウスに戻し交配させたF2バッククロスマウスを131匹(68匹;IL-10+,63匹:IL-10-)作成した。IL-10を発現するF2マウスは16%の糖尿病発症率を示すことが確認された。 マウス種の遺伝的背景により抽出される遺伝子が異なるため、db/dbマウスとの交配で、遺伝形質の多型を示す系統をC3H、DBA2マウスで検討した。2種の交配系統について、25匹のdb/+のヘテロF1マウス、PCR-PIRA法を用いて区別したdb/db(ホモ)、db/+(ヘテロ)および野性型マウス、計35匹のF2インタークロスマウスの糖尿病の発症頻度、体重、糖負荷後の血糖値について検定した結果、マウス個体間で遺伝形質の多型を示すC3Hマウス交配系を選択した。現在までに、ホモ(37匹)、ヘテロ(82匹)、野性型(31匹)が得られ、さらにn数を増加中である。 2) 糖尿病に関する指標とマウスゲノム全体の連鎖スクリーニング db/db、db/+および野性型を区別したF2マウスについて、糖尿病に関する定量的遺伝形質として、ホモマウスは8週齢時で、ヘテロマウスは10週齢時で血糖値、体重、膵島炎のグレーディング、糖負荷後の血糖値、血清インスリン値を収録した。同時に、インターネットで公開されているマウスの連鎖地図を基に、PCRで増幅可能で20cM以下の連鎖距離で全ゲノムをカバーする遺伝子マーカーを、合計200種類選択し、スクリーニングを実施中である。現在までに、各群マウスについてChr.1,2,3の44種の遺伝子マーカーを用いてスクリーニングを終了した。 3) 結果のデータベースの作成 血糖値、体重、膵島炎のグレーディング、糖負荷後の血糖値、血清インスリン値を、正規分布する変数に転換後、MapMaker/QTLを用いて定量的遺伝形質と遺伝子座位との連鎖を解析する方法で、現在解析中である。種々の検討の結果、MapMaker/QTLの使用は、ほぼ完全に実施可能となった。
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