研究概要 |
我々は以前、PCRによる任意点突然変異をスクリーニングすることにより恒常的活性型STAT5転写因子およびMPL(トロンボポイ工チンレセプター)を同定した。これらの活性型分子はいずれもIL-3依存性細胞の自律性増殖を誘導した。活性型STAT5は恒常的にリン酸化され、核に局在し、標的配列(β-caseinプロモーター)に結合して転写活性を上昇させることが判明した。さらに詳細な検討を行ったところ、この恒常的活性化は活性型STAT5においてリン酸化状態が安定に保たれることが原因と考えられた。現在患者白血病細胞で同様の突然変異が認められるかどうか、およびトランスジェニックマウスにおける活性型STAT5発現によるin vivoにおける効果を解析中である。 また最近活性型STAT5の導入によって自律増殖性を獲得したBa/F3細胞をIL-3で刺激すると逆に細胞死が誘導されるという意外な結果を得た。この細胞死はアポトーシスによるものであることを確認したが、現在細胞周期や各種遺伝子の発現誘導を調べることによってSTAT5活性化によるアポトーシスのメカニズムを解析中である。またMl細胞では活性型STAT5が分化を誘導することも判明し、そのメカニズムも解析中である。STAT5活性化によりpim-1,c-fos,CSM,CIS,JAB/SSI-1,p21など多くの遺伝子の発現が誘導されるが、現在までに得られた予備的な結果から考えて、この組み合わせと強弱によって増殖・分化・アポトーシスなど異なる生物活性が認められるものと予想している。
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